広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
司法書士・行政書士の佐藤正和です。
「亡父の不動産Aについて数年前に相続登記をしたのですが、亡父が別の不動産Bも所有していたことが分かりました。不動産Bについても相続登記をしたいです。」
このようなご相談がありました。
お話を伺うと、ご相談者以外の相続人は不動産Bの存在自体をまだ知らないとのことでした。
その存在を他の相続人にも知ってもらわないと手続きが進まないので、ご相談者から他の相続人に連絡してもらい、不動産Bについての情報を共有してもらう必要があります。
しかし、数年前におこなったという不動産Aの相続登記が気になりました。
その時の遺産分割協議で、不動産Aだけでなく、そのほかの財産についても取得者を決めている可能性があるからです。
例えば、遺産分割協議書に「相続人〇〇は、本協議後に新たに判明した財産を取得する。」といった内容が記載されているケースが考えられます。
もし当時の遺産分割協議書にこのような記載があれば、相続人の間で、不動産Bの取得者が誰かを確認する際の資料になります。
そこで、ご相談者に当時の遺産分割協議書が残っているか尋ねましたが、保管していないとのことでした。
また、ご相談者は当時の遺産分割協議書の内容を覚えておられなかったため、当時の遺産分割協議の内容を把握するための別の方法を考えることにしました。
1.法務局に保存されている登記申請の添付書類を確認
不動産登記の申請書やその添付書類は、一定期間、法務局に保存されています(※1)。
そこで、不動産Aの相続登記の際に作成した遺産分割協議書は法務局にまだ保存されていると考え、これを閲覧することを提案しました。
ご相談者から了承をいただき、私が代理人として法務局で閲覧請求をすることになりました。
2.閲覧請求には「正当な理由」が必要
登記申請の添付書類などの「登記簿の附属書類」を閲覧する場合、誰でも自由に閲覧できるわけではありません。
登記簿の附属書類を閲覧するには「正当な理由」が必要とされており、閲覧できる範囲は「正当な理由があると認められる部分」に限られます(※2)。
「正当な理由」があるかどうかについては、法務省の通達で具体的な取扱いが示されています(※3)。
今回のように、相続人が被相続人の相続に関する経緯などを確認するために相続附属書類の閲覧を請求する場合、具体的な紛争が生じていなくても「正当な理由がある」と認められる取扱いになっています。
そのため、今回の閲覧請求では、ご相談者が相続に関する当事者であることを証する書面などを準備しました。
3.閲覧請求について悩んだこと
附属書類の閲覧請求について、今までに私が経験したのはほんの数回にとどまります。
そのため、次の点を確認しながら慎重に手続を進めました。
① 閲覧請求の委任状について
今回の閲覧請求は私が代理人として行うため、ご相談者からの委任状が必要です。
その際、委任状に(認印ではなく)実印を押してもらい、印鑑証明書を添付する必要があるのか疑問を抱きました。
通達を確認したところ、一定の場合(※4)では委任状への実印の押印及び印鑑証明書の添付が必要とされています。
一方、今回の案件では、そのような閲覧制限措置はされていませんでした。
そこで、委任状には実印ではなく認印を押していただき、閲覧請求をしました。
結果として、これで閲覧することができました。
もっとも、実印・印鑑証明書の要否については管轄法務局に事前確認するのが安全だと思います。
② どの書類を閲覧できるのか
閲覧できる「正当な理由があると認められる部分」とは、具体的にどの書類を指すのかという点についても確認しました。
通達では、相続人が相続に関する登記簿の附属書類の閲覧を請求する場合、遺産分割協議書や遺言書などのほか、これらに添付された印鑑証明書についても「正当な理由」があると認められる取扱いが示されています。
・遺産分割協議書について
遺産分割協議書の閲覧は可能でした。
その協議書を見ると、亡父の不動産全部について取得者を定める旨の合意が記載されていました。
数年前に行った相続登記では不動産Aのみの名義を変更しましたが、ある事情のため、それ以外の不動産については名義変更をしていなかったようです。
・印鑑証明書について
印鑑証明書については、閲覧請求をしたご相談者自身のものに限って閲覧が認められました。
③ 閲覧する書類を写真撮影できるのか
法務局で閲覧する際、閲覧する書類をスマートフォンで撮影できるのかという点も気になりました。
今回は、「閲覧」の一形態として撮影も認められるのではないかと考えました。
しかし、念のため担当職員の方に書類を撮影したい旨を伝え、了承を得たうえで撮影しました。
閲覧した内容を後から確認できるようにしておくという意味でも、撮影が可能か担当職員に確認するとよいと思います。
④ ウェブ会議サービスを利用した閲覧
登記簿の附属書類の閲覧請求については、令和6年6月24日以降、ウェブ会議サービスを利用して行うことができるようになっています。
書類を保管している法務局が遠方にある場合には、法務局まで直接出向かずに閲覧できる点で便利な方法です。
今回のご相談では、書類を保管している法務局が私の事務所から車移動可能な範囲にありました。
また、ウェブ会議を利用する場合には事前の申出や日程調整が必要となるため、今回は法務局を直接訪ねるほうが手続は早く済むと考え、法務局に赴いて閲覧請求を行いました。
4.最後に
今回のケースでは、不動産Aの相続登記の申請人が、法務局に遺産分割協議書などの原本を提出した際、原本を返却してもらうための措置をとっておられませんでした。
そのため、不動産Bの相続登記を申請するうえで、遺産分割協議書を改めて作成し、相続人全員の押印をそろえるなどの手間がかかることは避けられませんでした。
ご相談者から他の相続人に遺産分割協議書の用意などを相談する際には、撮影した遺産分割協議書の写真を資料として他の相続人に見てもらうようお伝えしました。
その結果、他の相続人も写真を見て不動産Bの取得者を確認でき、相続人間で名義変更について意見の相違が生じることはなかったとのことでした。
不動産Bの相続登記も無事に完了し、ご相談者に満足していただき私も安心しました。
登記簿の附属書類の閲覧は、実務上確認しておくべきことがいくつかあり、私自身にとっても勉強になった案件でした。
今回の経験を、今後の業務にも活かしていきます。
※1 所有権移転のような権利に関する登記の申請書及びその附属書類の保存期間は、申請の受付の日から30年間です(不動産登記規則第28条第10号)。
※2 不動産登記法第121条第3項。なお、登記を申請した者による閲覧請求については同条第4項に規定されています。
※3 令和5年3月28日法務省民二第537号通達。本文中の通達はすべてこの通達を指します。
※4 被害者等の現住所等の閲覧制限措置がされている場合
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(公開日:2026年9月20日)
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