(「不動産登記をする意味? その1」の続き)
2、無い袖(そで)は振れる?
(1)一つの不動産を二人に売った場合
たとえば、Aさんが不動産を所有しているとします。
Aさんは、その不動産をBさんに売りたいと考えました。
Aさんは、この不動産を売りたいとBさんにお願いすると、Bさんは買いたいと言ってくれました。
このように、Aさんの「売りたい」という意思表示とBさんの「買いたい」という意思表示が一致することで、売買契約が成立します。
民法という法律では、売買契約が成立すると、所有権は売主Aさんから買主Bさんに移るとされています(ここは実務とは少し異なる理解ではあります。)。
では、もしもAさんが、Cさんにも同じ不動産を売る契約を結んだ場合、この不動産は誰のものになるでしょうか?
(2)先に買ったBさんのもの?
ことわざで「無い袖は振れない」というものがあります。
このことわざ通りに考えると、「AさんはBさんと不動産の売買契約をした時点で、Aさんは所有者でなくなっている。それなら、Aさんから不動産を買ったというCさんが所有者になるわけがない。所有者はBさんだ。」ということになりそうです。
(3)「Bさんのもの」とは限らない
しかし、民法という法律では、そのような考えを採用していません。
「BさんとCさんのうち、どっちが先に『所有権移転登記』をしたか、先にこの登記をした人を所有者としよう。」という考えを採用しています。
登記を先に備えて自分の権利を守ろうと一生懸命に動いた人を優先させよう、と考えるわけです。
別の言い方をすると、売買契約を結んだだけで安心して、登記はいつでもいいや、と呑気な人は、せっかく手に入れた所有権を失う可能性があるのです。
(4)登記をする意味
もちろん、先の例に出てきたCさんが、「Bが所有者になるのを邪魔してやろう」という嫌がらせで先に登記を備えたりした場合、民法は、そのような不正な人を保護対象から外しています。
しかし、これはあくまでも例外です。
原則は、「競争関係にある者のうち、先に登記を備えた者を勝たせる」というものです。
売買などの契約を結んだら、早めの登記を心掛けて権利を守るようにしましょう。(終わり)
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佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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