【不動産】農地法の許可書のまちがい

2023年07月14日 19時00分 不動産

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 広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
 司法書士・行政書士の佐藤正和です。

 司法書士の登記の仕事では、売買を理由に農地の所有権移転登記を申請することがあります。
 この申請のときは農地法3条か5条の許可書(または届出書)をつけて法務局に提出します。

 この許可書はお客さんか不動産業者さんからお預かりします。
 許可書は問題なく作成されたものを預かることが多く、許可書の記載に問題がなければ法務局から内容について指摘を受けることもありません。
 しかし油断は禁物で、お預かりした許可書について次のことがありました。

1、当事者の住所がちがう
 当事者の住所は住民票上の住所を記載します。
 たとえば、
 住民票上の住所:〇〇町一丁目2番3号
となっていれば、
 許可申請書の当事者の住所:〇〇町一丁目2番3号
となります。


 しかし、同じ方なのに
許可書記載の当事者の住所:〇〇町〇〇番地
となっていました。

 なぜ住民票上の住所とは違う住所が許可書に記載されているのでしょう?
 原因は2つ考えられます。

①許可申請を出した後に当事者が住民票上の住所を移転したから住所が食い違う
②住所は移転していない。しかし、住居表示が実施されているのに許可申請書に住居表示実施前の住所を誤って記載し、農業委員会でそのまま許可を受けた
 つまり、
住居表示実施前の住所:〇〇町〇〇番地
住居表示実施後の住所:〇〇町一丁目2番3号
となっているケースで、許可申請書に「後」の住所を書くべきなのに「前」の住所を書いている、ということです。

 ※住居表示がされると、住所は「…〇〇番地」から「…〇丁目〇番〇号」に変わります。


 私が遭遇したケースは、後者、つまり許可申請書に住居表示前の住所をお客さん(または業者さん)が書いたというものでした。

 この場合、農業委員会で「間違えた住所のうえに線を引いて住所を消す+正しい住所を記載する+農業委員会会長の訂正印を押す」手続きをしてもらいます。正しい住所に直した許可書を登記申請に添付すれば問題なく登記されます。

 ただ、農業委員会に上記の手続きをしてもらうには、農業委員会に提出する「訂正願」に当事者が押印したり、住居表示実施証明書が必要であったり、農業委員会から受け取った許可書をすべてそろえて農業委員会に返して、誤りを訂正してもらった許可書を受け取ったりなどの手順をたどることになり少し面倒です。

2、幽霊が押印している?
 これは意味が分からないと思います。
 許可申請書には「令和〇年〇月〇日」というように、申請年月日を記載します。
 私が遭遇したケースでは、その日付の時点ですでに死んでいる人の名前で氏名欄に署名され捺印もされているというものでした。
 いったい誰がこの署名捺印をしたのでしょうか?あるいは誰がそうするよう教えたのでしょうか?一種のホラーです。

 私は業者さんから、農地の転用許可書とともに土地の売買契約書のコピーも受け取っていました。
 両者に記載された当事者の名前がくい違ったので不審を抱き、「許可書の〇〇さんとは誰ですか」とお客さんに尋ねたら死亡の事実が明らかになったのです。

 この誤りも、前述の農業委員会の手続きで対応できるでしょうか?
 当たり前ですが、対応できません。誤りのレベルが桁外れです。

 この場合、すでに出された許可を農業委員会に取り消してもらい、相続登記で登記名義人を死者から生きている相続人に変えて、その相続人を一方当事者としてあらためて許可申請するよう業者さんに伝えました。

 職業柄、司法書士の大半は人並み以上に注意力が高いと思います。私は曲がりなりにも司法書士なので資料を精査しますし少しでも不安なところがあれば対応を検討します。
 本音は「最初から安心な書類、叩いてもホコリが出てこない書類をお預かりしたい」のですが、間違いがない書類を作ること自体が難しい方もおられ、そこに専門家の存在意義があるという当たり前のことを再認識する出来事でした。

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