【不動産】買戻権抹消

2023年05月19日 19時00分 不動産

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 広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
 司法書士・行政書士の佐藤正和です。

 最近、不動産の買戻権の登記を消す手続きをさせていただきました。

1、買戻権
 買戻権の行使期間が「10年」などと契約で定められていれば、その期間内であれば買戻権を行使して不動産の所有権を取り戻せます。その期間を過ぎてしまえば、買戻権を行使することはできません。
 買戻し特約は登記事項とされています。

 昭和の時代、広島県が住宅団地を売りに出したことがあったそうです。
 売り出す際には広島県が買主との間で買戻し特約付きの売買契約を締結してきました。
 そのため、住宅団地内の土地の登記簿をみると、広島県が買戻権者になっている「買戻し特約の登記」を見ることができます。

2、新しい制度~単独で抹消できる~
 今年の3月末まで、不動産の所有者がこの買戻し特約の登記を消すには、買戻権者(上の例だと広島県)と共同で「買戻し特約の抹消登記」を申請しなければいけませんでした。

 つまり、不動産所有者は「買戻し特約の抹消登記」を申請したいなら、買戻権者に協力してもらう必要がありました。
 具体的には広島県に依頼して抹消書類を取り寄せるなどですが、これが一般の不動産所有者にとっては面倒でした。
 
 ところが今年の4月1日に次の規定が施行されました。

 不動産登記法第69条の2
 買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第60条の規定(注:共同申請の方法)にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 この規定によると、契約の日から10年を経過したなら、不動産所有者などが単独で「買戻し特約の抹消登記」の手続きを進められます。

 ただ、この規定が施行されたからといって、従来のやり方(共同申請)ができなくなるわけではありません。共同申請もまだ使えます。

3、仕事で思ったこと
 私が引き受けた事案は上記規定にしたがって単独申請できるケースでした。
 そのため、上記規定に沿った内容の登記申請書の作成をしようとしたところ、申請書の記載例がどこにもありませんでした。
 もしかすると某出版社が発行している、法改正のたびにページが追加される差し替え式(加除式)の書籍には掲載済みなのかもしれませんが、私は加除式書籍は利用していません。
 司法書士専用のネットサービスで検索しても、やはり記載例が見つかりませんでした。

 ないなら自分で考えて申請書を作ればよいものです。
 しかし、あれこれ考えることに時間を割くよりも、従来から認められていた共同申請によるほうが(あまり考えずに済むから)楽に買戻し特約の登記を抹消できるのではないかと思いました。
 せっかく考えて作った申請書について法務局から補正指示を受けて精神的に消耗するのも嫌だなと思い、結局、買戻権者である広島県にお願いして抹消書類を取り寄せました。

 従来の面倒を解消するための新しい方法を使わずに従来の手続きを利用したわけで、時代の流れに逆らった感じがします。

4、おわりに
 そもそも、不動産登記法第69条の2は、なぜ「契約の日から10年を経過したとき」に限定しているのでしょうか。

 これは民法で買戻し期間は10年を超えることができないと定められているからです(第580条第1項)。そしてその期間を伸ばすことはできません(同条第2項)。
 買戻し特約は売買契約と同時にされるものですので(第579条)、契約の日から10年を超えて買戻権が存続することはあり得ません。

 このように実体としては買戻権が間違いなく消滅しているのに、買戻し特約の登記だけをセミの抜け殻のように残すことに意味はないので、買戻権者を関与させなくても抹消登記ができるというやり方はとても合理的です。
 このように便利な制度ができたのですから、次に買戻し特約の抹消登記の依頼があったなら第69条の2に沿う申請書を自分で考えて臨みます。


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