登記されている建物については、令和6年4月1日以降は相続登記の申請義務が生じます。
では、登記されていない建物は相続登記の申請義務があるのか?整理します。
1、そもそも未登記建物とは?
土地や建物を所有している場合、毎年5月頃になると、市区町村から固定資産税・都市計画税の請求書が所有者に郵送されます。
請求書と一緒に、納税通知書(課税明細書)も送付されます。
そこには所有者が所有する土地・建物がリスト化され、それぞれに評価額が記載されています。
そして、建物のところには「家屋番号」という欄があり、123番などの数字が記載されている建物があるはずです。
そういう家屋番号が記載されていれば、その建物は登記済みの建物です。
一方、「家屋番号」が空欄の建物があるかもしれません。それは未登記の建物です。はっきりと「未登記」と記載されていることもあります。
登記済みの建物であれば、「家屋番号」が記載されます。未登記の建物であれば、「家屋番号」は記載されていないか「未登記」と記載されているわけです。
たまに評価証明書に誤記があるので、建物が登記済みかどうか確実に判断するには、登記簿謄本を法務局に請求する必要はあります。もし請求しても該当する建物の謄本はないというのであれば、それは未登記建物です。
建物を建てる際に金融機関から融資を受けている場合、抵当権などの担保の登記を入れる必要から、建物の登記はきちんとされているはずです。
しかし、融資を受けずに建物を建てた場合などでは、登記をしていないことがあります。
2、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象になるか?
結論としては、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象にはなりません。
その理由は、相続登記申請の義務化に関する不動産登記法第76条の2を読めば明らかです(第1項のみ紹介します。)。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第76条の2
1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
ここの所有権の「登記名義人」とは、登記記録の「権利部」の権利者を指します(同法第2条第11号)。
したがって、「権利部」がある不動産についてのみ「登記名義人」という者は登場します。
ところが未登記の建物は「権利部」がない不動産ですので、「登記名義人」は登場しません。
よって、相続登記申請の義務化に関する上記の規定は未登記の建物には適用されません。
3、それでは未登記建物は登記しないままでOK?
登記しないままで良いかと聞かれると、登記しないなら自己責任で、とお答えします。
なぜなら、相続登記申請の義務化とは別に、次の規定にある建物については表題登記の申請義務があるからです。
(建物の表題登記の申請)
不動産登記法第47条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
※第1項のみ抜粋
さらに、この表題登記の申請義務に違反すると10万円以下の過料に処せられます(同法第164条)。
しかし、この理由で過料に処せられたという話を聞いたことはありませんし、ネットを旅していてそのような体験談に出くわしたこともありません。
ただ注意したいことは、昨今の相続登記未了の不動産の社会問題化の影響を受けて、この規定が今後は息を吹き返すかもしれないということです。相続登記申請未了という理由ではなく、表題登記の申請義務違反という理由で過料を科せられる可能性を否定できないのです。
気になる方は、表題登記の専門家である土地家屋調査士さんに相談してみると良いですし、司法書士に相談すれば調査士さんを紹介してくれると思います。
お近くの登記の専門家に相談されてみてください。
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