【不動産登記Q&A】登記完了証とは?

2021年09月03日 08時00分 不動産

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1、登記完了証とは?
 登記の手続きを経験したことがある方なら、登記が済んだ後に、「登記完了証」という書類を受け取ったことがあるのではないでしょうか。
 これは文字通り「登記が完了したことの証明書」で、法務局が発行する書類の一つです。
 この書類は、登記の申請をした方から発行を申し出なくても登記後に交付されるもので、手数料はかかりません。

 この書類から登記が完了したことが分かるのですが、どんな使い勝手があると思いますか?


2、使う場面
 登記完了証についてネットで検索すると、「登記が済んだことが分かるだけで、わざわざ要らない」「廃止してよいのでは」という冷たい意見が散見され風当りが強い書類ですが、私の経験上、次のような場面で使います。

①森林の名義変更届を市町村に提出する場合

 土地の登記名義人がお亡くなりになった場合、相続登記をして相続人に名義変更をすることになります。さらに、相続した土地が「森林」のときは、森林法という法律に基づいて、森林の名義が変わった旨を市町村の担当課に届け出なければならないことがあります。

 その届け出をする際に新しい登記名義人の名前を確認できる書類を付けて提出します。その書類は登記完了証のコピーで良いとする市町村があります。


 この書類としては、登記完了証ではなく「登記事項証明書」(事後謄本・じごとうほん。登記が終わった後に法務局で取得した謄本)を付けることもできるのですが、これだと法務局に手数料を払わなければ取得できないので、登記完了証でも良いとしてくれる市町村では、無料の登記完了証のほうがお手軽です。


②農地の相続届を市町村の農業委員会に提出する場合

 田や畑という「農地」を相続した場合、農地法に基づき、市町村の農業委員会に相続届を提出することが義務付けられています。


 これについても誰がどの農地を相続したかがわかる書類を添付して提出する必要があるのですが、市町村によっては、事後謄本ではなく登記完了証でも良いとしてくれる自治体があります。


③新築建物の火災保険契約を結ぶ場合

 建物を新築する場合、通常、建物表題登記→所有権保存登記→抵当権設定登記という登記をします。

 火災保険契約の必要書類として、以上の一連の登記が終わった後の建物の謄本を提出するよう保険会社に求められます。

 しかし、これらの登記ができあがるのに2週間程度かかるところ、そんなに悠長に待ってられない!という何らかの事情がある場合、保存登記以下の登記がまだでも、表題登記ができた後に交付される登記完了証でも良いといって対応してくれる保険会社もあります。実際、そのような経験をしました。ただし、登記完了証で良いかどうかは、保険会社によって対応が違うかもしれないので、担当者に確認するのが賢明です。


④評価証明書の代わりとして使える場合がある

 同じ年度内に、ある土地を売買してAさん→Bさん→Cさんの順に所有権が移転する場合を思い浮かべてください。

 Aさん→Bさんに所有権を移転する登記申請のとき、法務局に最新年度の評価証明書を提出する必要があります。
 Bさん→Cさんに所有権を移転する登記申請のときも、基本的には同じです。
 ただし、Bさん→Cさんに所有権を移転する登記申請のときには、Aさん→Bさんの所有権移転登記が完了した旨の登記完了証を提出すれば、最新年度の評価証明書は提出不要とされています(※1、※2)。


3、まとめ

 以上、登記完了証について触れてきました。登記完了証は地味な書類ですが、意外にも使いようがある書類です。
 何事も、見方を変えれば良いところ、役立つところがあると信じています。

 ※1 登記申請書に「令和〇年〇月〇日受付第〇〇〇〇号の評価額を援用」と記載することで、登記完了証の提出自体を不要とする法務局もあるようです。

 ※2 「Aさん→Bさんの所有権移転登記申請」と、「Bさん→Cさんの所有権移転登記申請」がそれぞれ異なる年度に行われる場合には、このような扱いは認められません。基本通りに最新年度の評価証明書が必要です。

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