数か月前から、ある故人の相続財産管理人の仕事をしています。
配偶者や子がいる方が亡くなった場合には、配偶者らが相続の手続きをしますが、身寄りがない方が亡くなった場合は死後の財産管理の手続きをする方が身近にいません。
こういった身寄りがない方の財産管理は相続財産管理人が行います。
相続財産管理人は、亡くなった方(被相続人)にお金を貸していた人たちに向けて、請求の申し出をしてくださいと催告する旨の公告をしなければいけません(債権者及び受遺者に対する請求申出の催告の公告(民法957条))。
この公告は、官報によって行います。
被相続人が誰からお金を借りていたかなど、相続財産管理人には分からないことです。
かといってそういう人たちを無視して相続手続きを進めるわけにはいきません。
そこで、世の中のどこかにいるかもしれない債権者らに向けて、請求の申し出をしてくださいと官報を通じて発信するわけです。
とはいえ、仕事で官報を読む人を除き、一般の方が官報を読むことはほとんどないと思います。
特定の国家資格では試験に合格した場合に官報に名前が載るので、資格試験の合格者の中には、名前が掲載された官報を記念に買った方もおられるかもしれません。
日常生活で官報と接点が生ずるのはそのようなごく限られた場面のことで、普段の生活で官報を意識することはありません。
相続債権者や受遺者にとっても事情は同じと思われ、実際に官報を読んで債務の履行等を請求する方がどれだけいるのか、有意味な手続きなのかと私は疑ってしまいます。
そうはいっても民法上定められた手続きですので、法律にのっとって粛々と手続きを進めています。
話を相続財産管理人に戻しますと、「債権者及び受遺者に対する請求申出の催告の公告」は、相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日から2ヶ月経過後に、遅滞なく相続財産管理人が行います。
「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日から2ヶ月経過後」とは具体的に何月何日になるのか?
間違えるととんでもないことになるので、きちんと把握しておく必要があります。
たとえば、次の例だと「2ヶ月経過した日」はいつでしょうか。
「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日」
→令和4年6月8日
この日付に2ヶ月を足した令和4年8月8日が「2ヶ月経過した日だ」と考えて良いのでしょうか?
「『経過』とは令和4年8月8日が過ぎたということだから翌日の令和4年8月9日だ」と考えて良いのでしょうか?
結果的にその日付で正しいこともありますが、このような単純な理由での結論付けは危険です。具体的に整理します。
①「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日」
→令和4年6月8日(水)
②起算日
→令和4年6月9日(木)(民法140条本文、初日不算入の原則。)
③応当日
→令和4年8月9日(火)
④期間満了日
→令和4年8月8日(月)
⑤2ヶ月の期間満了を経過した日
→令和4年8月9日(火)
したがって、「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日から2ヶ月経過後」の日とは、令和4年8月9日(火)以降を指します。
注意点は、「曜日」です。
どういうことか、上記の事案の日付を1日だけ前にずらしてみましょう。
①「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日」
→令和4年6月7日(火)
②起算日
→令和4年6月8日(水)
③応当日
→令和4年8月8日(月)
④期間満了日
→令和4年8月7日(日)←?
⑤2ヶ月の期間満了を経過した日
→令和4年8月8日(月)←??
?をつけた④期間満了日は、令和4年8月7日(日)ではありません(この日に取引をしない慣習がある場合。)。
この日が日曜日だからです(民法140条)。
正しくは以下の通りです。
④期間満了日
→令和4年8月8日(月)(同条)。
⑤2ヶ月の期間満了を経過した日
→令和4年8月9日(火)
したがって、「相続財産管理人選任公告が官報に掲載された日から2ヶ月経過後」の日とは、令和4年8月9日(火)以降を指します。
「官報に掲載された令和4年6月7日に2ケ月を足して令和4年8月7日」だとか「『経過』だから令和4年8月8日」と考えると、間違えてしまいます。
私が資格試験の勉強をしているとき、期間の計算で2ヶ月経過の問題が出されたら2本の指を折りまげて日付を計算するみたいなことをしていました。何曜日かは考慮しなくてよいという指定が問題にあったからかどうか記憶が定かではありませんが、それでこと足りていました。
実務では曜日もチェックする必要があります。
冒頭の相続財産管理人として、官報公告の申込みを官報販売所にしようとしたときに「期間満了日が日曜っておかしい」と気づいたので、ブログにまとめた次第です。
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