【雑記】「自分で登記をしたいのですが」と自己責任

2022年07月15日 21時00分 雑記

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 司法書士は当事者からの依頼を受けて、登記手続の申請代理人として登記手続に関与します。

 私の場合、当事者本人が自分で登記申請をしたいといえば、その気持ちを尊重します。
 そうはいっても、自分でやるにはかなり難しい案件だと、「司法書士に任せたほうが良いですよ」とアドバイスはします。
 このアドバイス、仕事をくれくれという思惑が言葉の裏に嫌らしく隠れているように捉えられるので、口に出すのは正直苦手です。
 
 それでも、「いやあ自分でやれるわけないだろ」と思うことがあり、そういう場合は専門家の務めを果たすつもりで「本当に自分でできるとお考えですか?」と熟考を促すことがあります。

 そうであるのに「自分でやる」というなら、もう止めません。

 締め切りがある登記なのに、自分でやって予定に間に合わないということもあるでしょう。それによって当事者自身が後悔することになっても、それは自己責任です。

 「なんで最初から司法書士に依頼しろと言ってくれなかったのか」と、こちらに責任をなすりつける方もいますが、「自分でできるのか」というこちらの問いに応えなかったのは、まごうかたないその人です。成熟した大人なのですから、責任転嫁はご遠慮願いたいものです。

 意地悪な想像をすると、「登記は誰でもできるから司法書士に依頼してお金を払うのはもったいない」と思っている方も一定数いるのかもしれません。それゆえ登記の仕事を軽く見て、値下げを要求してくる方もいるのでしょう。

 そのような考えを持っている方からの仕事は、私は遠慮します。

 司法書士の仕事は、単に書類を作ることだけではありません。

 当事者からの聴き取り、解決策の提示、提示した解決策それぞれの長所・短所の説明、その理解を得たうえで手続きを進めることへの承諾を得ること、書類に押された印鑑に間違いはないか、書類の有効期限は切れていないか、そもそも判断能力に問題はないか、必要に応じて法務局との事前相談、調査士や税理士に助言を仰ぐ、思わぬ落とし穴が潜んでないか、誤字脱字がないか、などなどなどなど。
 関係者が複数おられればみんなに電話してお会いするアポをとりますが、相手の仕事のご都合などでスケジュールが合わないことも珍しくありません。思うように手続きを進められないことに歯がゆい思いをすることは、司法書士ならだれでも体験することだと思います。

 こういう工程を経たうえでの書類です。一つ一つの工程を木の幹や枝だとすれば、法務局に提出する書類は、幹や枝を経たところで実る果実です。登記官が形式審査の範囲でその果実を良いと判断すれば、登記完了です。いい加減な工程があれば、書類は不良と判断されるかもしれません。

 なにかとケチをつけて値下げを求めてくるばかりか、そうであるのにレベルの高い要求をしてくるなど、そういう方と関わりを持たざるを得なかったことが過去にあります。いろいろ積み重ねて(そして犠牲にして)仕事をしていることまで見てもらえなかったのでしょう。
 そのときは業務は何とか完了しましたが、苦痛と嫌な思い出しか残りませんでした。山本五十六元帥の「男の修行」を思って感情を殺して仕事をしたものの、業務が完了して報酬を受け取ったときは、正直「やっとこの人と縁が切れる」と解放感で心が充実したものです。

 お互いに尊重し合える関係の方であれば、こうしたほうが良いなどアドバイスをしたくなります。
 逆に、こちらを軽く見てくる相手であれば、登記に必要な最低限のことしか伝えません。
 私は人のわがままを聞くために仕事をしているわけでもありません。
 仕事とはいえ、感情ある人間であれば誰でもそうでしょう。

 私佐藤も人間です。より良い関係を築ける方との出会いに期待しながら、一歩一歩着実に前に進みます。

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