【不動産登記法改正】所有不動産記録証明制度

2022年06月07日 18時00分 不動産

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1、相続登記から漏れる不動産
 被相続人が所有していた不動産をすべて把握できているか。相続登記をする場合、この問題にぶつかります。

 今でもそうですが、従来は市町村で名寄帳を閲覧・取得したり、相続人から被相続人の登記済み権利証などを見せてもらったり聴き取りをしたりして相続不動産を把握します。

 このようなアナログで人頼みな側面があるやり方だと、調査から漏れる不動産もあるかもしれません。

 たとえば、名寄帳を福山市に請求すると、福山市内の相続不動産は名寄帳に表示されます。しかし、他の市町村にある相続不動産が存在したとしても、それは福山市で閲覧、取得した名寄帳には表示されません。
 それゆえ、本当は福山市以外の市町村にも相続財産があっても、相続人の誰もその存在を知らない場合、相続登記の対象から漏れたまま手続きが進められる可能性も否めません。

 私の実際の経験では、私の地元の方の相続登記の案件で、被相続人が地元のみならず北海道にも不動産を所有していたということがありました。
 その不動産は固定資産税・都市計画税が発生するものではなかったため、北海道の某市から納税通知が届くことがなかったため発見しにくい不動産でした。
 そのときは自宅で登記済証を保管されていたのでその不動産に気づくことができたものの、もし登記済証がなければ身内にも私にも存在を知られることなく相続登記の対象から漏れていたかもしれません。

 こういうわけで相続不動産の調査には神経を使います。

2、所有不動産記録証明制度
 「所有不動産記録証明制度」とは、特定の者(自分自身や被相続人)が所有者の登記名義人として記録されている不動産に関する所定の事項を証明する制度、です。
 中身が乏しい定義ですが、この制度を利用すれば、どこの市町村にある所有不動産かを問わず、自分や被相続人が所有者登記名義人となっている不動産が記録された「所有不動産記録証明書」を法務局で受け取ることで、所有不動産の存在を知ることができます。

 市町村ごとに分けて請求する必要がない点では名寄帳よりは便利ですし、従来よりも調査漏れの危険が小さくなります。

 ただ、「所有不動産記録証明書」を見ることで不動産の存在が判明しても、(相続登記の登録免許税の計算根拠になる)固定資産評価額までは当然記録されていませんので、評価額については別途市町村で評価証明書を取得するなどして調べる手間はかかります。

 また、本人名義の不動産はどんなものがあるかは、プライバシーや信用に関わる繊細な事柄なので、誰でも「所有不動産記録証明書」を取得できるわけではありません。
 「あの人の持っている不動産って何があるんだろう?」と簡単に調べられてしまうと、調べられる方はたまったものではありません。
 したがって、自らが所有権の登記名義人である不動産については証明書の交付を請求できますが、被相続人などの被承継人が所有権登記名義人となっている証明書については、相続人その他の一般承継人が交付を請求できるとされています(改正不動産登記法第119条の2第2項)。
 制度利用にあたって必要な書類などの詳細はまだ明らかではありません。しかし、相続人が請求する場合、自身が相続人であることを証明する戸籍等を添付してくださいということになるのでしょう。

 この制度は令和8年4月までに施行される予定です。今までの相続財産の調査方法に一つ便利な方法が加わるので、よく勉強しておきたいものです。



参考 不動産登記法(改正)】

第119条の2(所有不動産記録証明書の交付等)

1 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前2項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 (略)

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