学生時代の友人から、定期建物賃貸借契約書の作成依頼がありました。
「定期建物賃貸借契約」の特徴は、契約期間が満了した後は、賃貸借期間の延長や契約の更新がない点にあります。
通常の建物賃貸借契約において、貸主が契約の更新拒絶等をするには正当な事由がなければならないなど一定の要件をクリアしなければいけません。借主は物件を利用し続けられるように法的に守られているのです。
しかし、「定期建物賃貸借契約」は通常の契約と違って貸主に有利な契約です。
国土交通省のパンフレットでは、「賃貸人のメリットとしては、期間満了により確実に賃貸借契約を終了させることができるため、契約期間や収益の見通しが明確になり、安定した賃貸住宅経営が可能になる」と説明されています。
契約を結ぶ時点で契約の終了時期がいつなのかがはっきりするため、ずっと居座られる恐れがない、建物を貸す側にとっては安心だということです。
「定期建物賃貸借契約」のひな形は、国土交通省などの機関・団体が一般に公開しています。しかもそのクオリティも高いです。
そのため、さきほどの友人からの依頼については、ひな形を加工するだけで簡単に済ませようと思えば済ませられるものでした。
ただ、ひな形を100パーセントそのまま友人に提供するのは芸がない。余計なことと思われない程度の工夫をしたいと思い、契約書の案と一緒に、契約書についてのコメント(注意書き)を付けて回答しました。
たとえば、
・建物の賃貸借契約なので、契約書には印紙を貼る必要がないこと(※土地の賃貸借では必要あり。)
・賃貸人は、賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならないこと(※これを怠ると、契約の更新がないこととする定めは無効となる。)
という注意書きです。
依頼の内容は単に「契約書の作成」なのだから、こんなコメントまでつけるのは余計かなと思う一方で、友達の誼(よしみ)で余計なことでも許してくれるだろうと思いつつ回答した次第です。
まあしかし、良い意味で意外なもので、契約書案だけでなくこういうコメントも送ってくれてありがとうと随分と感謝してもらえました。
この出来事を通じて気づいたことは、依頼内容を額面通りに受け取って契約書を作って終わりというのではなく、相手が求めていることや知らせておくのが良いことを察して+αのことをすると喜んでもらえるということです。
当たり前のことであるだけに普段意識することがないことです。これを機によく肝に銘じます。
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佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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