亡くなった方を相続すると、借金などの負の財産まで引き継いでしまうので、相続放棄をしたい。
そのようなご相談が寄せられます。
1、手続きはわりと簡単だけど
相続放棄したいなら、家庭裁判所で「相続放棄の申述(しんじゅつ)」という手続きを踏む必要があります。
その手続き自体は比較的簡単です。
しかし、相続放棄をするかどうかの判断にあたって注意していただきたいことがあるので触れておきます。
2、おじ、おば、いとこに借金が飛び火?
(1)配偶者と子ども全員が相続放棄する場合
たとえば、夫Aさん、妻Bさんの夫婦と、その子CさんDさんという家族を思い浮かべてみましょう。
Aさんが死亡した場合、BCDさんがAさんの財産を相続する権利を持ちます。
もしもAさんが、BCDさんが背負いきれないぐらいの借金を負っていたときは、BCDさんはどうするでしょうか?
BCDさんにとっては、そんな借金を相続してしまうと破産する危険があります。
そこで、BCDさんは、所定の期間内に家庭裁判所で相続放棄の申述手続きをすることなるでしょう。
(2)「おじ・おば」との関係
では、BCDさん全員が相続放棄をすると、誰がこの借金を負うことになるでしょうか?
仮に、死亡したAさんの両親などの直系尊属が生きている場合、その方が法定相続人となります。
これにより、両親などは、相続放棄をするかどうか判断することになります。
しかし、Aさんの直系尊属もすでに死亡していることが珍しくありません。
このように直系尊属も死亡している場合、さらにAさんの兄弟姉妹が、法定相続人となります。
これにより、今度はAさんの兄弟姉妹が相続放棄をするかどうか判断することになります。
ここでご自身の家庭のことを思い浮かべていただきたいと思います。
このブログをご覧になっている方がBさんと同じ身分関係に立っている場合、Aさんの兄弟姉妹は、おじさんやおばさんです。
おじさんたちの顔すべてを、正確に思い浮かべることができるでしょうか?
普段から付き合いがある方たちでしょうか?
(3)「いとこ」との関係
もしもおじさんたちも死亡していた場合、その方のお子さん(あなたのいとこ)がAさんの相続の関係者となり、相続放棄をするかどうか判断してもらうことになります。
では、いとこと連絡をとれますか?
核家族化や、仕事の関係などで親族同士でも遠くに住んでいたりすることで、たとえ「おじ・おば」や「いとこ」という血縁関係がある方との間柄でも、普段付き合いがない方もおられるのではないでしょうか。
もし、死亡したAさんの奥さんのBさん、その間の子であるCさんとDさんが相続放棄すると、おじさんおばさん、この方たちが死亡している場合、いとこが当初のAさんの借金を背負うことになるかもしれないわけです。
相続放棄をするかどうかは、自分のためを思って判断すれば良いことではあります。
しかし、自分たち家族から少しだけ遠い存在のおじさんたちにも借金のつけが回ってしまうかもしれないことを理解したうえで、相続放棄の判断はすべきです。
自分以外の誰かが作った借金を背負うことは、誰にとっても面白いことではないからです。
3、最後に
相続放棄をする理由の典型例として、「亡くなった方に大きな負債があるから」というものがあります。
たくさんの借金を作っていたことを身内の恥と捉えて、それを知らせるのは嫌だと考える向きもあるかもしれません。
しかし、もしおじさんたちに借金が飛び火してしまう恐れに直面した場合には、自分が相続放棄をする前に、その方たちにあらかじめ事情を説明しておくのが良いでしょう。
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佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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