成年後見のご相談の際、「成年後見の申立費用は、誰が支払うのでしょうか?」という質問をいただきました。
後見制度を利用したいけどお金の支払いは誰がするのだろうと疑問に持っている方の参考になればと思い、まとめてみました。
1、申立費用は申立人が負担するのが原則
後見等開始申立てに必要な手続き費用には、たとえば申立ての手数料、後見等登記費用、書類の郵便料、医師が鑑定するときの鑑定費用などがあります。
これらの費用は、法律上、各自負担(後見等開始の審判申立事件の場合は申立人)が原則です。
鑑定費用はだいたい5万円以上かかるものなので、結構大きな金額です。
しかし、事案によっては、手続費用の全部または一部が本人(被後見人等にあたる方)負担となることがあります。
広島家庭裁判所の申立書の書式では、「手続費用の上申」というチェック欄があります(書式はこちら)。
申立費用を本人負担としたい場合、その欄にチェックして申立書類を提出すれば、家庭裁判所が本人負担という判断をしてくれるかもしれません(ただし、必ずそのような判断をしてくれるわけではないことに注意しましょう。)。
もし本人(被後見人等)負担と家庭裁判所が判断した場合、本人の負担とされた範囲の費用については、本人の財産から精算できます。
2、申立てのために司法書士、弁護士に支払った報酬は誰が負担?
後見等開始申立書作成を司法書士や弁護士などの専門家に依頼する場合、報酬として10万円ぐらいかかります。専門家や内容の複雑さによっては、もっと多くの報酬が発生することもあります。
申立人にとっては、報酬も本人負担なら良いのにと思う方もおられるのではないでしょうか?
しかし、本人の財産から精算できる手続費用には、申立て関与した専門家の報酬、手数料等は含まれません(※)。
※ブログ「後見開始申立書類作成の司法書士報酬は誰が負担?」もご覧ください。
3、後見業務を行う専門職後見人に支払う報酬は誰が負担?
司法書士や弁護士などの専門家が後見人に選任された場合、仕事として後見業務を行う以上、報酬が発生します。
では、この報酬は被後見人が負担するのでしょうか?親族が負担するのでしょうか?
答えは、被後見人が負担します。
民法には、「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」という定めがあります(第862条)。
このことは被後見人の方に十分な財産がないときでも同じで、被後見人の親族には「後見業務についての報酬」の負担義務は生じません。
これに対して、上記の2で触れたとおり「申立書作成にあたって専門家に支払う報酬」は申立人に支払い義務があります。これらの区別が大切です。
4、最後に
以上のまとめた点がお役に立てば幸いです。ご不明な点がございましたら弊所にご相談ください。
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