【相続】相続放棄したのに固定資産税を払うべき?

2022年02月06日 08時00分 相続・遺言

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 「相続放棄をしたのに、固定資産税の納税通知書が福山市から届いたのですが、支払わなければいけないのでしょうか?」

1、相続放棄をするとどうなる?
 相続により、相続人は、亡くなった方のプラスとマイナスの財産両方を引き継ぎます。
 そのため、プラスよりマイナスのほうが大きい債務超過の場合には、相続放棄をして債務を引き継ぐことを免れることがよく行われます。

 ここで具体例を挙げます。

 父親Aさんは不動産を所有しており、固定資産税の支払い義務を負っていました。
 Aさんは、令和3年11月に亡くなりました。
 親族会議などを通じてよくよく思いを巡らせた結果、Aさんの子Bさんが相続放棄をすることになりました。
 そして、Bさんが翌年の令和4年1月6日に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしました。
 しかし、令和4年5月になって、Bさんに宛てて市から固定資産税の納税通知書が送られてきました。

 「相続放棄をして不動産の所有者にならないのだから、固定資産税も払う必要はないのでは?」
 Bさんがそういう疑問を抱くのも当然です。

2、法律を見てみよう
(1)民法だけを踏まえると

 相続についてのルールは、「民法」という法律で定められています。
 民法の知識だけで上記の疑問を解消しようとすると、固定資産税を支払う必要はないようにも思えます。
 なぜなら、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみな」されるからです(民法第939条)。
 Bさんは、相続放棄をすることで、Aさんの相続に関しては、Aさんが亡くなった令和3年11月某日から相続人とならなかったものとみなされます。
 したがって、不動産の所有権を相続しないのはもちろん、「Aさんが負っていた固定資産税の支払い義務も相続しないのではないか?」と思ってしまうのは、ごく自然なことです。

(2)地方税法があります
 しかし、固定資産税は「地方税」という税金です。
 それゆえ、「『地方税法』という法律も踏まえるとどうなるか?」という視点を持つことも必要です。

 そこで地方税法343条を参照すると、固定資産税を支払う者について以下の通りになっています。
 ・土地家屋の固定資産税は、1月1日(賦課期日)において、①登記簿又は②土地補充課税台帳若しくは③家屋補充課税台帳に「所有者として登記又は登録がされている者」に課すこと
 ・1月1日において「所有者として登記又は登録されている者」が亡くなっている場合、固定資産税はその「相続人」に課すこと


 要点は、「所有者として登記又は登録がされている」Aさんが亡くなったら、その固定資産税は相続人Bさんが支払うという点です。
 なお、地方税法343条では、固定資産税を「相続する」という文言は使用されていません。しかし、固定資産税を相続するのと変わらないものと考えられます。

3、結論
 上記の具体例に戻ると、Aさんが亡くなったのは令和3年11月です。
 それから登記など役所で手続きをすることなく、令和4年1月1日を迎えました。
 その時点で「所有者として登記又は登録されている者」は、「Aさん」です。
 Aさんは1月1日において亡くなっているので、「相続人」である「Bさん」が、固定資産税を支払う義務を負います。

 なお、翌年の令和4年1月6日にBさんは相続放棄の申述をしているものの、だからといってBさんが令和4年度の固定資産税の支払いから免れられるわけではありません。

 しかし、令和5年度以降の固定資産税の支払いについては別です。相続放棄をしたBさんが翌年以降も「相続人」として扱わることはおかしなことです。
 家庭裁判所から発行される「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」を携えて市町村役場の担当課に行って、令和5年度以降の固定資産税について自分を「相続人」扱いしないよう伝えるべきです。


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