「父親から相続した田舎の土地を手放したい。できますか?」
1 所有権の放棄はできる?
いらない土地を譲り受けたが、持っていてもどうしようもないので放棄したい。そのお気持ちは分かりますが、実際に放棄することはできるのでしょうか?
結論から申しますと、これはできません。
「土地の放棄はできないです。」とお客さんにお伝えすると、がっかりされることが多いです。
どうにかしてあげたい気持ちがあっても、今の法律では、どうしようもありません。
2 相続土地国庫帰属法
ただ、申し訳程度ですが、相談者の方に対しては、いわゆる「相続土地国庫帰属法」という法律が、遅くとも2023年(令和5年)4月までには運用が開始されると情報提供しています。
法律の名前だけをみると、「相続した土地を国に帰属させる法律」というイメージがわきます。この制度は、相続または遺贈(相続人に対しておこなう遺贈のみ)で土地を取得した方が、「一定の条件」がそろえば、その所有権を放棄できるというものです。
では、「一定の条件」とはどんなものでしょうか?
まず、放棄できるのは、次のいずれでもない「きれいな土地」に限られます。
①建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地
②土壌汚染や埋設物がある土地
③崖がある土地
④権利関係に争いがある土地
⑤担保権等が設定されている土地
⑥通路など他人によって使用される土地
しかし、以上のいずれでもない優良の土地を放棄する方が果たしているのだろうか、と個人的には疑問です。
そのうえ、放棄にあたっては、審査手数料のほか、10年分の土地管理費相当額のお金を国に支払わなければなりません。
この「管理費用相当額」(10年分)は、たとえば200㎡の国有地(宅地)だと約80万円程度だそうです(法務省の資料より。)。
かなりのお金がかかりますね。利用したいという人がどれくらいいるのでしょうか。
なので、この新しい制度をお客さんに紹介させていただくのは気がひけてしまいます。放棄できるのではと安易に期待させてしまうと申し訳ないからです。
そもそも、この制度を作った理由は、今話題の所有者不明土地の増加を防ぐという社会全体の利益を守る点にあり、いらない土地を相続や遺贈で取得した方個人の権利保護ではないのです。
そう考えると、このような内容の制度になってしまうのは仕方ないのかもしれません。
でも、「いらない土地を相続や遺贈で取得してしまったが、どうしよう」と悩まれる方は今後増えるでしょう。法律の改正でなんとか解決できないかなと考えてしまいます。
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佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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