身寄りがない方の後見人をしていますが、「この場合どうなるの?」と考えることが多いです。
1、本人の身体拘束への同意?
施設に入所しているときに、本人が興奮して暴れるということがあり得ます。
身体拘束は原則として禁止されています。
しかし、他の入所者とのトラブルや施設の物品の損壊などの事故が起こらないように、本人の身体の一部を拘束したり、運動を制限するということが、緊急時においてやむを得ず行われることがあります。
この身体拘束について、成年後見人は原則として同意権を有しません。
2、手術などの医療行為についての同意?
健康診断受診や各種の検査の受診については原則として成年後見人に同意権があります。
しかし、手術を受けるなど、本人の生命や身体の安全に直接かかわることについてまで、成年後見人に同意権は認められていません。
病院としては、手術に当たって被後見人の親族から同意を得たいはずですが、身寄りがない方の場合には、誰の同意を得るべきか悩みどころのようです。
そうすると、本人に近しい、しかも本人の世話をするという意味ともとれる「後見」人に頼んでみようか、となるようです。
(豆知識ですが、「後見」は古典では「うしろみ」と読み、世話をすること、という意味があります。後ろから見守るというイメージです。)
しかし、成年後見人は、手術などの同意をできる立場にはありません。どんな世話でもできるというわけではないのです。
3、万が一亡くなった場合の葬儀は?
成年後見人は、本人の死亡後も一定の事務については行うことができるとされています。
身寄りがない方の成年後見人の場合、葬儀や納骨などの手続きを誰がするか、ということが問題となります。
成年後見人は、本人の「死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」については、家庭裁判所の許可を得れば可能とされます(民法第873条の2第3号)。
「葬儀」については、このかっこ内の表現に「葬儀」が含まれれば成年後見人も葬儀が可能なのですが、「葬儀」は含まれないと理解されています。
そのため、成年後見人は亡くなった本人の「葬儀」をできないことになります。
もっとも、通夜や告別式などの宗教色儀式を行わない「火葬」のみであれば、成年後見人も可能とされているようです。
「納骨」については、成年後見人ができるかどうか微妙なようです。
微妙というのは何とも歯切れが悪いですが、実際の場面では家庭裁判所と相談することになると思います。
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佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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