「会社の取締役の任期がとっくの昔に満了してしまっていたようです。」
1、取締役、監査役の任期
有限会社を除く株式会社では、取締役、監査役という役員には「任期」という在任期間があります。法律上、役員に選ばれたら、任期を迎えるごとに役員を選任し直す手続きを経なければなりません。
親族全員で会社の株を持っている中小の株式会社では、通常、取締役の任期は2年から10年、監査役の任期は4年から10年の間で設定されています。
なお、厳密には、任期は「選任後〇年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会終結時」と定めるよう法律で求められています。
2、任期切れによる問題
(1)任期切れの取締役の行為は適法?
会社登記のご相談の際に定款を拝見すると、役員の任期切れに気づくことがあります。
この場合、任期が過ぎてしまっている人が、役員として仕事をして良いのか、という疑問が生じるところです。
しかし、新たに取締役になった方がいないのであれば、任期が切れる前から取締役として活動していた方は、取締役と同様の活動ができます。
これは、取締役として活動できる者がいなくなることで会社の運営が止まってしまうのを防ぐためです。
このように、任期後でも取締役として活動する方を、法律では「取締役としての権利義務を有する者」と言います。
監査役についても同じことが言えます。
(2)選任を怠ったことによる過料
とはいえ、本来は、任期が切れる時点で新たに役員を選任しなければなりません。
これを怠ると、代表取締役は過料(金銭の負担)という制裁を受けます。
金額は数万円程度ですが、具体的金額は怠っていた期間の長さなどにより異なります。
3、任期切れへの対応
(1)予防策
そもそも、「法律を守ろうという意識」(コンプライアンス)を重視するなら、任期が切れる時期を見計らって株主総会を開催して役員を選任する体制を整えるのが理想です。
しかし、仮に任期を10年にしている場合、10年も先に「そろそろ任期が切れる頃だな。選任手続きをしないと。」と思い出せる奇特な人は、なかなかいないでしょう。
「10年先に任期の更新」などと手帳やメモ帳に注意書きを留めても、そんな先にそのメモを見返すこともないかと思います。
そういう場合、設立登記などの会社登記を依頼した司法書士に、任期の管理について相談してみるのも一つの手です。
(2)実際に任期が切れた後の対応
任期切れが判明したら、できるだけ早く株主総会を開いて役員を選任するべきです。
ただし、任期は通常、会社の定款で定められているため、任期が切れていないかどうか調べるには、定款を見る必要があります。
しかし、そもそも定款が見当たらないという会社が珍しくありません。
そこで、役員再任を機に、いっそのこと定款を作り直すというやり方もあります。
定款は会社設立登記に関わった「法務局」や「公証役場」で保管しているかもしれません。
しかし、そのような関係機関に問い合わせるよりも、定款を作り直すのが取り掛かりやすく現実的です。その際には司法書士に相談するのが良いです。
4、最後に
役員登記以外のご相談でお話を伺っている際に、会社担当者ご自身もそのときに初めて任期切れに気づくということも多々あります。
その際には、ご依頼いただいた登記手続とは別に、役員の登記手続もするよう提案させていただいています。
広島県福山市駅家町大字万能倉734番地4-2-A
佐藤正和司法書士・行政書士事務所
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