1、共有不動産特有の問題
ある不動産の所有者の登記名義が、次の通りになっていました。
なお、持分記載は省略しています。
〇〇町大字〇〇123番地の4 A
〇〇町大字〇〇123番地の4 B
この登記がされた当時では、Aさん、Bさんの住所に「の」が入っていました。
このたびAが死亡し、BがAの持分を相続しました。
そして、Bの現在の住所は次の通りになっています。
「〇〇町大字〇〇123番地4」
住所から「の」という文字が、法令改正によって削除されています。
したがって、相続によるA持分全部移転登記の相続人(登記申請者)は、素直に考えると次の通りになります。
「〇〇市〇〇町大字〇〇123番地4 B」
これで登記を申請して完了すると、所有者名義は次の通りになります。
〇〇町大字〇〇123番地4 B
〇〇町大字〇〇123番地の4 B
2、この「B」は同じ人?
さて、Bの名前が2つ出てきました。
一般的な感覚だと、このBは同一人物だと思えませんか?「の」があるかどうかは、取るに足らない些細なことに思えます。
しかし、法務局とのやりとりで、当局は「の」の有無は大切なものとみている印象を受けました。
同一人物か別人かなんか、どうでも良いではないかと思われる方もいるでしょう。
たしかに一般の方には「どうでもいい」テーマです。
でもですね、司法書士にとっては重大な関心事なんです。
3、議論の実益は?
なぜ重大な関心事かというと、次のような議論の実益が登記上あるからです。
仮に
〇〇町大字〇〇123番地4 B(①)
〇〇町大字〇〇123番地の4 B(②)
という登記をした後に、Bが死亡し相続によりB持分をBの相続人に移転する登記を申請するとしましょう。
(1)①と②が別人なら?
もし①と②を別人と考える場合、Bの相続人は、
①相続によるB持分全部移転登記
②相続によるB持分全部移転登記
という登記を繰り返すことになります。
なぜなら、相続登記では被相続人毎に申請書を分けて登記を申請する必要があるからです。
1件目の被相続人は「の」がないB、2件目の被相続人は「の」があるB、と区別するわけです。
(2)①と②が同じ人なら?
これに対して、①と②を同一人物と考える場合、相続による所有権移転登記1件のみで良いことになります。
こちらのほうが、登記申請を繰り返すよりもスマートで登記記録が簡潔です。
(3)法務局の処理は?
先日法務局からの補正連絡で、所有権移転登記1件のみという処理はされないようなことを言われました。その理由に深入りしてもどうしようもないと思い追及しませんでしたが、コンピューター処理の都合上などの事情によるものかもしれません。
では、法務局はB持分全部移転登記を呪文のように繰り返して登記しろというのかというと、そういうわけでもありません。
そもそも、BがA持分を相続する場合、その相続による持分移転登記の申請者を
「〇〇町大字〇〇123番地4 B」
ではなく、
「〇〇町大字〇〇123番地の4 B」
とするならば、この相続登記後の所有者名義は
〇〇町大字〇〇123番地の4 B(①)
〇〇町大字〇〇123番地の4 B(②)
という あんばい になります。
①も②も「の」が入っているから、同一人物と判断できます。
したがって、もしBが死亡して相続人から相続登記を申請するなら、所有権移転登記1件でできます。とても論理的です。
それゆえか、A持分をBが相続で持分移転登記を申請するときに「〇〇町大字〇〇123番地の4 B」で登記したらどう?という示唆に富むご指摘を法務局からしていただきました。
厳密には「今の住所に『の』はないのだから、それを入れるのはおかしいのでは?」という疑問もありますが、便宜を優先して目をつむるのかもしれません。
4、終わりに
以上のとおり、Bが死亡したときにクローズアップして縷々紹介しました。
しかし、ある同職(司法書士)の方のブログを拝読していると、Bが不動産を売って所有権移転登記をする場合にも似た問題に遭遇するようです。
すなわち、売買に基づく所有権移転登記1件でできるか、それとも①売買に基づくB持分全部移転登記、②売買に基づくB持分全部移転登記の2件でするのか、という問題です。
ただ、「の」の有無は同一人判断に影響するかというと、影響しないと今まで理解してきました。友人(同期)の司法書士に聞いても「初めて聞いた」という答えでした。結局、私の考えすぎなのかもしれません。
だとしたら、法務局とのやりとりは何だったんでしょう。
ときどき思い出して考えていきます。
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