土曜は仕事休みの日なので、通常は午前中ずっと惰眠を謳歌していますが、今日は珍しく朝7時に目を覚ましました。
午前に歯の定期検査を受ける予定があったからです。
うつらうつらと朝刊を読んでいると、おやっと思う記事が目に留まりました。
「巨大ITに本社登記要請 グーグルやメタ 政府が監視強化」
司法書士という職業病でしょう、いくら寝ぼけていても登記という文字には脳が反応します。
どんな内容の記事なのでしょう?
これは、グーグル社など海外の大手は日本の会社法で本社の登記をすべき義務を負うのに、これを怠っているというものです。その登記をしなさいと。
そもそもそんな義務があるのか?
会社法の規定を調べると、その疑問は解決します。
会社法には、外国会社について次の規定が置かれています。
(外国会社の日本における代表者)
会社法第817条
第1項 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。
グーグル社を例にとると、この条文の外国会社とは、Google LLCを指します。
そして、Google LLCは日本でSNSなどを通じてサービス利用者らと取引を継続しているので、この条文に基づいて考えると、同社は日本における代表者を定めなければならないことになります。
これを定めないことはコンプライアンス(法令遵守)違反にあたります。
それではGoogle LLCの「日本における代表者」って誰なのかなとネットで検索しても、よく分かりません。
日本法人の代表として奥山真司氏のお名前が出てくるので、この方がGoogle LLCの「日本における代表者」でもあるのでしょうか。
ともかく日本のおける代表者がどなたであれ、日本における代表者を定めたなら、次の会社法の規定も適用されます。
(外国会社の登記)
第933条
第1項 外国会社が第817条第1項の規定により初めて日本における代表者を定めたときは、・・・外国会社の登記をしなければならない。
第2項 外国会社の登記においては、・・・第911第3項各号・・・に掲げる事項を登記するほか、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 (略)
二 日本における代表者の氏名及び住所
しれっと「第911第3項各号」のことが書かれていますが、大切な文言です。
というのも、この「各号」の中には、会社の商号、目的、本店・支店の所在場所など、会社について大切な事柄が詰め込まれているからです。
すなわち、外国会社の登記では、その会社(Google LLCなど)の本店所在場所、目的などを登記しなさいと会社法は言っているわけです。
そしてグーグルやメタは、この登記を懈怠しているわけです。
もし登記を怠ったときは、日本における代表者は、100万円以下の過料に処せられます(会社法第976条第1号)。
そもそもなんで日本政府はGoogle LLCなどに本社の登記を備えるよう要請したのでしょうか?
あるネットニュースでは、「インターネット交流サイト(SNS)上の中傷コメントをめぐる訴訟手続きなどが進めやすくなり、利用者保護につながる」からだとされています(国をまたがる訴訟は私の専門外なのでコメントは控えます。)。
なお、Google LLCやMeta Platforms, Inc.(フェイスブック運営企業)などの外国会社の登記はされていなかった一方で、グーグル合同会社やFacebook Japan株式会社などの日本法人はきちんと登記されています。
「グーグル社」というと一つの会社があるかのように思ってしまいますが、グーグル社にはGoogle LLCという外国会社と、グーグル合同会社(英語表記:Google Japan G.K.)という日本法人があります。
「グーグル社」という一つの会社があるわけではありません。Google LLCはグーグル合同会社の親会社です(2022年4月時点)。
会社法上、会社の登記をしないと会社として活動をすることができません。したがって、グーグル合同会社などの日本法人の登記がされているのは当然です。
その一方で、日本で継続して取引をしていたにもかかわらず、Google LLCなどの外国会社の登記はされないままでした。
子会社の日本法人の登記はきちんとしていたけど、親会社の外国会社の登記がされていなかったということです。
このように外国会社と日本法人という二本の軸を対比してこの記事を読むと、面白いなあと感じました(そう感じるのは私だけかもしれません。)。
外国会社の登記は、広島県福山市のような地方都市では滅多に遭遇しない案件です。
しかし、司法書士事務所に勤務していたときに一度だけ中国に本店がある外国会社の登記をさせていただく機会がありました。
この新聞記事を読んでいて、「あー訳の分からない登記案件だぁ。中国語なんか分からんわい!」とぶつくさ言いながら、法務局職員や事務所のベテラン職員のみなさまのお知恵をお借りして何とか登記にこぎつけたことを思い出しました。あのときはありがとうございました。
一度苦労して学ばせていただいたノウハウは忘れないものです。
海外IT大手から外国会社の登記の手続き依頼が小職に来ることは2022%あり得ませんが、どんな登記相談もウェルカムの姿勢は大切にしていきます。
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