広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
司法書士・行政書士の佐藤正和です。
1. 外国会社
(1)外国会社が未登記という報道
ある新聞の朝刊記事に、「巨大ITに本社登記要請」という見出しが掲載されていました。
記事の内容は、海外の大手企業(外国会社)が日本の会社法に反して本社の登記義務を怠っているというものです。
「外国会社」というと、外国にある会社というイメージが先行するため、私たちの生活とは遠い存在にも思えます。
しかし、SNS(インターネット交流サイト)の利用など日常生活の一場面において外国会社のサービスを利用することは珍しくなく、それゆえ外国会社は意外と身近な存在といえます。
(2)未登記の何が問題か
SNS上の中傷コメントをめぐり投稿者の情報開示請求や訴訟に至ったというニュースがよく報じられます。
情報開示請求等の準備段階で、登記記録を見てSNSを運営する外国会社の情報が明らかになれば手続はスムーズに進められます。
しかし、登記上外国会社の情報が明らかでないなら、在外公館に掛け合って調査するなどの手間で時間がかかります。調査に時間を要する間に、中傷コメントが削除され追跡できなくなるという問題が起こり得ます。
そこで、外国会社についても法律にしたがって登記をしてもらうことが求められます。
以下、外国会社の登記について具体的に見ていきます。
2. 外国会社の登記
外国会社が継続して取引をする場合、会社法に関して少なくとも次の点に注意を要します。
(1) 「日本における代表者」を定める
外国会社が日本において取引を継続しようとするときは、「日本における代表者」を定めなければいけません(会社法第817条第1項)。
(2) 外国会社の登記義務を負う
外国会社が初めて「日本における代表者」を定めたときは、「外国会社の登記」をする義務があります(同第933条第1項)。
その内容の一つとして「日本における代表者の氏名及び住所」が定められています(同933条第2項第2号)。
(3) 未登記の罰則
「外国会社の登記」をするまで、その外国会社は日本において取引を継続して行うことができません(同第818条第1項)。これに違反した者は過料に処せられます(同第979条第2項)。
3. 未登記の背景
法務省によると、登記を怠っていた海外SNS事業者などが48社あったそうです。
登記してこなかった背景には次の(1)から(3)の事情があったとされます。
(1) 課税されたくない
未登記の背景には、外国会社が「日本における代表者」を登記すると租税条約上の「恒久的施設を有する」と扱われてしまう税務上の懸念がありました。
(2) そもそも登記対象ではないという理解
日本代理店である法人が「日本における代表者」を務めている実態がありました。
しかし、「日本における代表者」は個人(自然人)がなるもので、法人がその地位につくことは想定されていません(※1)。
そのため、法人が「日本における代表者」を務めている場合は登記されないという理解が成り立ち得ました。
(3) 「日本における代表者の住所」の問題
日本における代表者の業務は訴えられたときの対応のみというケースが多く、そのケースでは「日本における代表者」は弁護士が務めています。
そうすると、弁護士が「日本における代表者」である場合、弁護士の「住所」を登記すべきことになりそうです。
しかし、「住所」とは生活の本拠を指すところ(民法第22条)、弁護士個人の生活の本拠は訴訟業務とは直接の関係がないため、その住所を登記により公示する意味は乏しいといえます。
それどころか、弁護士にとって住所は登記されたくないのではないかと私は想像します。
4. 登記を促すための法務省等の対応
前記3(1)から(3)について、法務省等は次のとおり対応しています。
(1) 課税の問題
「日本における代表者」の登記をしても、必ずしも租税条約上の「恒久的施設を有する」ことにはならないとされています(東京国税局ホームページより)。
(2) 「日本における代表者」が法人の場合の問題
「外国会社の日本における代表者は法人がなることも可能と考えられる」という解釈を示しています(※2)。
したがって、法人が「日本における代表者」になっている場合も登記義務が生じます。
(3) 「日本における代表者」の住所の問題
「外国会社の日本における代表者として弁護士を定めた場合には、当該弁護士の事務所の所在場所もこれに該当すると考えられる」という解釈を示しています(※2)。
5. まとめ
法務省の担当職員の方によると、先の48社すべてについて、登記の申請または総務省への事業の休廃止等の届出がされたということです。
外国会社の登記は比較的珍しい案件ですが、私は過去に外国会社の登記をさせていただいたことがあります。そのときは法務局職員の方たちと相談しながら登記完了に至りました。
このときの経験をもとに理解を深めて類似案件にも対応できるよう研鑽して参ります。
※1 「日本における代表者の氏名及び住所」は登記事項とされています(会社法第933条第2項第2号)。
「氏名」とは個人(自然人)を指す場合に使用されます。会社等の法人を指す場合には使用されません(法人を指す場合「名称」を使用します。)。
したがって、「日本における代表者」になるのは個人(自然人)であり、法人が「日本における代表者」になることは想定されていません。
※2 令和4年6月24日付け法務省民商第307号法務省民事局商事課長通知
(公開日:2022年4月16日/最終更新日:2025年7月26日)
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