【会社】合併について認可を要しない旨の証明

2022年07月26日 19時00分 会社・法人

「【会社】合併について認可を要しない旨の証明」の画像

 司法書士事務所に勤務していた開業前の時分、株式会社の吸収合併の登記の手続きをさせていただいたことがあります。

 合併案件の経験が当時とても浅かったので、何か見落としがないかと目を皿にして、会社の登記や関連の書籍を読んだ覚えがあります。

 その案件では、合併消滅株式会社が、その登記上の目的の一つに「索道」(さくどう)の事業を挙げていました。
 「索道」という言葉をそれまで聞いたことがなかったのですが、ネットで調べてスキー場のリフトやロープウェイのことだと知りました。

 「なんかワナがありそうだな。」
 「索道」事業は決して社会的に怪しいものではないのですが、見知らぬ用語には見知らぬ手続きが絡んでいるかもという警戒心が生じました。

 私は不安が解消されるまでとことん調べたい性分なので色々な本にあたりました。
 それでも「索道」について記述した文献は見当たらず、司法書士にとって定番の松井信憲先生の「商業登記ハンドブック」でも「索道」事業の会社の合併については触れられてはいませんでした。
 しかし、ある同業者の方が「索道」について書いたブログを見つけました。全くの僥倖です。

 一定の事業を営む株式会社の合併等について、主務官庁の認可が効力要件となっている場合、主務官庁の認可書又はその認証がある謄本を添付しなければいけません(松井信憲「商業登記ハンドブック」2-1-5(3)(商事法務))。
 この知識に同業の先生のブログ記事の知識をブレンドしてあれこれ考えた結果、「索道」事業の株式会社についてもこのことがあてはまると判断しました。
 すなわち、「索道」事業には鉄道事業法という法律の適用があり、鉄道事業者たる法人の合併は、国土交通大臣の認可を受けなければその効力を生じません(第38条及び第26条2項本文)。認可が効力要件となるわけです。
 したがって、「国土交通大臣の認可書又はその認証がある謄本」の添付が必要です。
 もし「索道」事業は登記上の目的とされているだけで、実際にはそれをおこなっていない場合、当該会社はいわゆる目的上事業者に当たり、合併登記の申請では「合併についての認可を要しない旨の国土交通大臣の証明書」の添付が必要となります。

 では、この認可書や証明書はどの役所で入手できるのか調べると、県庁であることが分かりました。
 証明書の入手にどのくらい時間がかかるか不明だったので、時間がかかって合併スケジュールが狂ってしまう可能性を危惧し、依頼された会社にその証明書のことを説明したうえで早めに用意するほうが良いとお願いしました。
 県庁での証明書の代理取得は行政書士業務だと理解していましたが、当時私は行政書士業務をおこなっていなかったので、会社サイドで対応していただいた次第です。

 さらにその会社は、「索道」事業以外にもいろいろな事業を目的として登記していました。
 念には念を入れて、他の事業は主務官庁の認可を要しないのかひとつひとつ関連業法(養蜂振興法など)を調べたうえ、管轄法務局に照会をかけるなどして万全を期しました。
 結局、認可に関する書類が必要となるのは「索道」事業のみでした。こういう下調べは依頼者にとって可視化されていないので評価もされにくく、それゆえ縁の下の作業といえます。

 上記認可書や証明書が必要となるのは特殊なケースです。それに気づくことができたのは、専門書や信頼できる同業者の方のブログのおかげと思っています。
 もちろん、書籍であれブログであれ「本当にそうか?」と思って、自分の考えと責任のもと、情報の信ぴょう性を吟味する必要があります。それでもブログ情報は、思わぬ落とし穴を事前に察知するきっかけになります。

 蛇足ですが、「会社の事業目的はたくさん盛り込めば良いというものではないなぁ」とも思いました。
 登記上の事業目的が多いと、合併(会社分割でも)準備のときに「この事業は認可が必要なのか?」と考え込む時間が多くなってしまいます。まぁ、合併なんかするつもりはないよという会社には関係ないことですが。

 弊所は合併案件も扱っています。合併をお考えの方からもご連絡していただければ幸いです。

 ☆ブログランキングに参加中☆

 にほんブログ村 士業ブログ 司法書士へ
 にほんブログ村

 ↑クリックしていただけるととてもうれしいです!

 広島県福山市駅家町大字万能倉734番地4-2-A
 佐藤正和司法書士・行政書士事務所
 TEL084-994-0454
 お問い合わせはこちら!