広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
司法書士・行政書士の佐藤正和です。
1. 地代の定め
(1) 地代
他人の土地のうえに「建物を所有したい」「太陽光設備を設置したい」場合、土地の所有者と利用希望者との合意で土地利用のため地上権を設定することがあります。
通常、土地の利用希望者は、利用を認めてもらう代わりに地代を土地所有者に支払います。そして地上権設定登記において地代も登記されます。
(2) 複数の土地の地代の定め
複数の土地に地上権を設定する場合、地代の定め方に注意が必要です。
たとえば、隣り合うA土地・B土地の上にまたがる形で建物を所有するために、A土地・B土地に地上権を地代付きで設定する場面を想定します。
・土地ごとに地代を定めた場合
契約の当事者が「A土地の地代が80万円、B土地の地代は20万円」と地代を定めた場合、A土地の登記記録には「地代80万円」、B土地の登記記録には「地代20万円」と記録されます。
・土地ごとに地代を定めていない場合
この場合が問題です。
契約の当事者が「A土地・B土地の地代は一括で100万円」と地代を定めた場合、A土地の登記記録に「地代 B土地と一括で100万円」と登記できるでしょうか。
また、B土地の登記記録に「地代 A土地と一括で100万円」と登記できるでしょうか。
結論:登記できません(※1)。
理由:登記は不動産ごとにされるから。地代を登記するのであれば土地ごとに地代を定めなさい、ということです。
2. 地代の支払時期
(1) 合意の内容
地代の支払い時期を定めている場合、その時期も登記されます。
支払時期の合意内容には、①定期払い(月払い・年払いなど)、②地上権設定時の一時払い、③地代の全部又は一部の前払いなどがあります。
これら①から③の合意は信頼できる書籍で紹介されているため、同じ合意がされた案件であれば悩まず登記申請できます。
(2) 私が担当した事案
私の担当事案では「令和〇年〇月〇日までに支払う」という合意がされており、その日付は地上権設定日より後でした。
①から③のいずれでもないけど、いわゆる「後払い」も登記できないとおかしいと考えてその合意内容に沿う登記を申請し、その通り登記は完了しました。
このように典型と少し違う内容の案件では、法務局に登記を申請する前に、見落としや思い込みがないかと思案を巡らせています。
このような経験の積み重ねが大切だと考えて業務に向き合って参ります。
※1「A土地・B土地の地代は一括で100万円」という合意自体は有効です(契約自由の原則)。
【関連知識】買戻特約
地上権の地代の定めについて検討しているとき、不動産の買戻し(※2)についても似た問題があったことを思い出しました。
具体的にどのような問題か気になり専門書にあたると「数個の不動産の買戻代金を一括して登記することの可否」という論点でした(※3)。
こちらも「不動産ごとに金額を決めるべきか」「一括の金額を決めれば良いか」が問題となる点で、地上権の地代と共通しています。
では、数個の不動産の買戻代金を一括して登記できるでしょうか。
結論:原則として一括して登記することはできません(※4)。
こちらは受験勉強で学んだ知識ですが、今までの私の実務経験では活用したことがありません。
今後使うことがあるのか、先のことは分かりませんが、いつかこの知識を使って人の役に立つことをおもって復習します。
※2 「買戻し(かいもどし)」とは、ある財産の所有権を相手に移す代わりにその相手から「売買代金」の名目でお金を融資してもらい、融資金の完済等一定額を支払えば所有権を返してもらえる、というものです。こちらはイメージ優先のためのおおざっぱな説明であることをご了承ください。
※3 登記研究381号87頁以下の質疑応答
※4 例外は敷地権付区分建物(マンション)の場合です。
(公開日:2025年6月20日/最終更新日:2025年7月24日)
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