【読書】「ロマノフ家 12の物語」の読書感想

2021年11月19日 08時00分 読書

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 中野京子さんの「ロマノフ家 12の物語」を読み終えました。

 読み終えた感想は、「ロシア史は重い」

 ハプスブルク家、イギリス王家のものを読んだ後だったので、それらとロマノフ家を比べました。
 浮き彫りになるのは、ロマノフ家は親が子を、そして妻が夫を殺(あや)めることが多いということで、なんとどろどろした歴史だろうと憂うつになりました。

 本書では、ロシアの歴史を学ぶと必ず出てくる「農奴制」にも触れられています。
 これは、農民の移動の自由を奪って土地に縛り付けたうえで、人頭税や結婚税などの各種の税金を課す仕組みです。農民にとってはたまったものではありません。
 豪奢なエカテリーナ宮殿やエルミタージュ美術館などのロシアが誇るまばゆい建築物も、農奴の犠牲という陰の土台がなければこの世で造られることはなかったと思います。
 歴史には表と裏の二面性があるのだろうかと考えるきっかけになりました。

 ところで、ドストエフスキーは「罪と罰」や「地下室の手記」などの作品を遺しています。
 私はこれらの作品を読んで、どんよりとした雲が浮かんだ灰色の空を思い浮かべてしまいます。
 一部の作品だけを読んで全体を評価することは短絡的です。しかし、専門家から見てそのような暗いイメージは適切と評価されるのであれば、農奴制などのロシア史が抱える重たさも、作者ドストエフスキーの意識を通じて作品に表れているように思っています。

 学校の世界史の授業では登場しない怪僧ラスプーチンも、「12の物語」では触れられています。
 ラスプーチンは、1905年頃から祈祷の力を買われてロマノフ王家と接触をするようになったそうです。
 わずか120年ほど前なのに、正体がはっきりしないそのような人物を一国の王家が自身に近づかせたというのが不思議でなりません。
 当時の皇帝ニコライ二世は、神がかり的な存在にも頼りたいというぐらいの立場に追い詰められていたのかもしれません。
 というのも、1905年といえば日露戦争でロシアが敗北した年ですし、国内でも政治に不満を持つ者が多かった政情不安の時だったからです。跡継ぎの子アレクセイの健康問題もニコライの悩みの種だったのでしょう。

 いろいろなストレスを抱えると、自分を救ってくれるものにすがりたくなるのが人間共通の弱い部分です。
 そこに皇帝や市民という身分の違いは関係ないのだろうと思った次第です。

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