広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
司法書士・行政書士の佐藤正和です。
1. ある施設の方からの紹介
「後見開始申立は本人からもできるって本当ですか?」
このようなご相談をいただくことがあります。
結論は「できる」です。ただし判断能力が怪しい場合には注意が必要なので以下解説します。
・きっかけ
この記事を書こうと思ったきっかけは、ある施設職員の方から、入所者の後見開始申立書の作成のご相談が寄せられたことがあったからです。
入所者ご本人ともお会いし、集めていただいた必要書類を調査したところ申立人が入所者ご本人になっていることに気づきました。
申立人とは後見制度の利用希望者です。施設からお預かりした書類では、入所者ご本人が後見制度の利用を希望しているとなっていたのです。
・申立人は誰もがなれるわけではない
施設の方に事情を尋ねると、本人以外に申立人になる方がいないとのこと。
申立人が誰かは法律で決められており、だれでもなれるというわけではありません。施設が後見制度の利用を希望しても、施設には申立人の資格はありません。
2. 条文はどう書いてある?
(1) 条文では本人申立てもOK
民法には次の規定があります。
(後見開始の審判)
第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族(途中省略)により、後見開始の審判をすることができる。
実は、条文では「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」自ら後見開始の申立てができるとなっているのです。
(2) しかし、問題が(本人の意思が分からない)
だからといって実際に本人が申立てをすることは適切なのでしょうか。
・本人の意思を知りたいけど
施設職員の方にお話しを伺うと、ご本人は簡単なことについては理解できるものの後見制度については理解できていないとのことでした。
「後見についてよく分からないままの本人申立ての後見開始書類の作成」をして良いというのではかなり違和感を抱いてしまいます。
私自身ご本人と面談して後見制度をかみくだいて説明しても、やはりご本人は沈黙を続けるばかりで申立ての意味など理解できていないように見受けられました。
・場合によっては却下の可能性
法律は申立人の能力を要求していませんが、申立て後の家庭裁判所と申立人との間のやり取りで支障があるようなら審理できず、場合によって申立てが却下される可能性があります。
仮に認知症の方であれば、通常その症状に波があり比較的正常な判断能力がある時とそうでない時があります。
正常な判断能力がある時に後見開始申立てについて理解してもらい後見開始申立書類作成を依頼してもらえればその依頼は有効と考えられます(ただし安易に有効とすることは禁物と考えます。)。
一方、判断能力がない状態がずっと続くのであれば、本人が理解できるタイミングが無いということなので、本人申立ての後見開始申立書類を作成するべきではないと私は考えます。
・誰に申立人になってもらう?
この場合だれに申立人になってもらうべきでしょうか。
配偶者か4親等内の親族がおり手続きに協力的であれば、その方に申立人となってもらえば良いでしょう。
しかし、最初に書いたとおり相談者ご本人には配偶者がおらず、4親等内の親族の存在も明らかではありませんでした。
ただ、一定の場合には市町村長も申立てができます(知的障害者福祉法など)。
・私が採った対応(市に相談を)
そこで市長申立てで手続きを市に相談してはどうかと施設の方にはお伝えしました。その際には市長申立にしてほしい事情を説明した書面と資料を用意し、必要に応じて市の担当者の方に見てもらいたい旨、それでも市長申立てはできないと言われれば、また私に声をかけてくださいと申し添えました。
・市の判断(市長申立てでやります)
その後、施設の方から市長申立てで手続きを進めることになったとの連絡をいただきました。
市の担当課においても事情を踏まえて市長申立ての適否について検討していただけたのだと思います。
ご本人の関係者の間でコミュニケーションをとることが大切だということを実感したとともに、現場での関係者の意見のすり合わせが大切だということも学びました。
この学びを踏まえて今後も関係者との話合いを大切にして参ります。
※以下のブログ記事は2022(令和4)年4月16日に掲載したものです。
本稿と同じ「後見開始申立て」に関する内容ですので同日付けの記事を削除のうえ改めて掲載します。
【4親等内の親族による後見開始申立て】
1. 申立人はだれ?
成年後見人を選任する場合、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見開始の審判の申立てをします。
この申立てをすることができるのは本人・配偶者・4親等内の親族などに限られています。
たとえば、おじ・おば、おい・めい、いとこは「四親等内の親族」に当たるので申立てをすることができます。
2. 同意書の提出が必要なこともある
本人の配偶者や子どもなどの推定相続人が後見人を選任することに同意しているのであれば、申立書とともにその同意書も家庭裁判所に提出することとされています。
・同意書不要なこともある
しかし推定相続人の反対などにより同意書が用意できない場合、それを提出する必要はありません。
(ただし申立て後の家庭裁判所の審判まで時間がかかることがあります。)。
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