【後見】被後見人が死去したこと

2024年07月05日 19時00分 成年後見

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広島県福山市の相続登記・成年後見は佐藤正和司法書士・行政書士事務所へ!
司法書士・行政書士の佐藤正和です。

もう半年以上前のことです。私が成年後見人を務めている被後見人の方がお亡くなりになりました。
この方は独身でお子さん・ご両親・兄弟姉妹もおられませんでした。生前は施設に入所していましたが、お亡くなりになる数週間前から体調不良のため病院に入院していました。

午前5時頃にかかってきた病院からの電話で被後見人が亡くなったことを知りました。
被後見人が亡くなったことは私にとって初めてのケースでしたので、病院職員の方とご本人にまつわる今後の手続きについて相談と確認をさせてもらおうと思い、日の出前の暗い道中、車を走らせ病院に向かいました。

そもそも被後見人本人の死亡により後見は終了し、私は後見人ではなくなります。
「私はもう後見人ではないから後の葬儀などは相続人でやっておいてね」というのは一般論として言えなくもないのですが、ご本人に相続人がいない場合にはそういうわけにはいきません。

墓地、埋葬等に関する法律
第9条第1項
「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。」

上記の規定があるものの、実際には後見人であった私が対応すべきと考えました。
入院先の病院から早く遺体を引き取ってほしいと求められている急ぎの状況下で、市に連絡し埋火葬の手続きをしてもらうのは現実的とは思えなかったからです。

病院職員の方とは、ご遺体の引取りは私が行うこと、病院内のご本人の荷物は私が預かって帰ること、未払いの入院費など費用の支払いなどおこなっていく諸々の手続きを確認しました。間違ったことをしたくないので家庭裁判所と相談しながら進めることになるなあと朝焼けに染まる道を引き返しながら思いました。

先ほども触れたとおり、被後見人本人の死亡により後見人は後見人ではなくなります。
そのため後見人の権限もなくなりそうですが、民法には次の規定が定められています。

(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
第873条の2
成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる(佐藤注:「しなければならない」(義務)ではない)。ただし、第3号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
1 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
2 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前2号に掲げる行為を除く。)

この規定をよりどころに手続きを進めました。
上記3号の火葬に関する契約の締結は家裁の許可が必要とされています。そのためご本人が亡くなったその日に管轄の家裁に許可申立てをし、申立て当日に許可をもらいました。
家裁の担当書記官の方からは、相続人との間で火葬契約をめぐりトラブルが起こるかもしれないときに許可申立てをしてはどうかというアドバイスをいただきました。今回のように相続人がいないなど争いになる見込みがないケースではいちいち許可は不要という意味と捉えています。
同じケースに遭遇したら家裁に確認させていただくと思いますが、教えていただくことばかりゆえ恐縮しております。

他にも市役所で死亡届の手続きが必要です。

戸籍法87条2項
死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人(途中省略)も、これをすることができる。

そこで市役所に手続きについて相談したところ、「死亡届は葬儀屋さんがすることが多いです」とのこと。それなら私がするより手続きに慣れている葬儀会社経由でお願いするほうが良いだろうと思い、先の火葬の手続きとあわせて死亡届の手続きも葬儀会社にお願いすることにしました。

後見の仕事をするにあたり私が参照している書籍には、後見人が葬儀を主催する場合で相続人が存在しない事案では「直葬」で執り行うことにとどめるべきと記述されています。
「直葬」というのは宗教的儀式(通夜・告別式等)を行わない火葬のみの葬儀です。

そこで葬儀会社には直葬でお願いしたい旨を伝え、私の立会いのうえではありますが病院から遺体を引き取る手続きも葬儀会社にしていただきました。
葬儀会社の担当者の方との話合いで直葬候補日時をいくつかに絞り、ご本人には相続人ではない親類がおられたので、親類にあたる方に、直葬への参加を希望されるときは都合の合う日時を教えてほしい旨を連絡し日時を調整しました。

火葬が終わるまでの間の斎場の待合室で、親類の方がご本人にまつわるお話をしてくださいました。プライベートなことなので内容には触れませんが、ご本人の人となりと人生、そこに私が携わる意味を束の間考えさせられました。

生前お世話になっていた入所施設にもご本人の荷物が残されたままでした。こちらの荷物についても親類の方と施設職員の方の理解を得たうえ、私が引き取り空き家となっているご本人の自宅に運びました。

急いで行うべき手続きを終え、次に後見終了の事務報告書を作成し家裁に提出しました。こちらは後見の任務終了(本人死亡日)から2か月以内にするものです(民法870条1項)。そのため時間に余裕はありました。
ただし相続人がおられないので、相続財産清算人(清算人)の選任申立書類も準備し事務報告書とともに家裁に提出しました。

清算人選任申立てから清算人選任まで3か月程度かかりました。それから清算人にご本人の財産(通帳・有価証券など)を引き継いでもらい、財産引継書(どんな財産をいつ清算人に引き継いだのか記載した書面)を家裁に提出しました。

ご遺骨の保管は、火葬に同席された親類の方がお手元での保管を希望されていたのでその方にお願いしました。家裁への事務報告書にもご遺骨の保管先を書き、清算人にもお伝えしました。

初めての事案ということで関係者の方に助けてもらいながら手続きを進めた次第です。
次回は初めての事案とはいえなくなるわけですが、後見業務は登記の業務と違って正解が一つとは限りません。周囲の方に助けてもらいながら手続きを進めることになると思いつつも、かといってできないこと・しないことの言い訳となってはいけないので、後見人としてできるとされていることは私もきちんとできるように後見の勉強は今後も続けます。


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